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2010年4月19日 (月)

Anniversary of Angel ④

Rake

「いったいどこにあるんだろう…?」coldsweats02

幻の橋はすぐ見つかると思っていたのに山の間を塗りつぶすように広がる湖をぐるっと見渡してもそれらしいものは見えなかった。
もう通り越してしまったのかもしれないなぁ…

watch「海のごとか有様でなが」

左腕のコロンが時を刻むのを忘れもしないでのんびり辺りを伺っている。

「うん…」

一方通行の風の中、自由自在に飛んで探すのは難しい。ちょっとあせりが出てきた。
…なに焦ってるんだろ? 私…“幻の橋”を見つけてなんとかできるのだろうか?

Rake2

「コロン?」

watch「あいな?」

「その橋って“願い事”を聞いてくれるものなのかなぁ…」confidentsweat01

watch「“願いぃ”?ナギサン何、願いあるとやな?」

「…義江さんのことだけど…覚えてる?さっきの話…」

watch「あーっ!会いたかヒトいるよしかのことらか?ナギサンそいつらなとこさ行って『会ってやれや』さゆうたら良いのだば?」

「えーっまさかっsweat01そんなことできないよぉっ!」coldsweats01

さっき聞いた義江さんの話…できるものなら何とかしてあげたいとは思う。
でも、札幌の相手の男の人の居場所は知らないし、聞くわけにもいかない。行けたとしても幽霊の私が何言えばいいだろ…。怖がられたり、怪しまれたら意味ないじゃん。

watch「あても、たらふく目ェ前で手ぇ合わせれ申したが、叶えてやらなろうにも、こちも動かね石ころん身だすたからなぁ…」

「やっぱり?そうだよね…」think

コロンも元々、石の仏様で随分お参りに来た人がいたそうだけど、願い事されても聞きようがなかったそうだ。「幻の橋」だって同じことかもしれないよね…願い事ってどこへいってしまうのだろう…

watch「ナギサン?あれだねだか?ハシは!」

「えっ!どれ?どこ!あっそうだ!橋だ!」

ぐねぐねとカーブする大自然の景色の中に灰色の横線が見えた。その途中に小さく挟まっている物がある。
湖の向こう側の山から強い風が吹き降ろしてくる。その風に乗り換えて一気に橋を目指した…
あれ?またあの香りがする。石油のような香り。この近くに家があるのかもしれない。
少し用心して行こう…。切り株が点々とある岸に下りて斜面を登っていくと橋はすぐに見えてきた。

Nagisataush_2

「これ…が“幻の橋”?」coldsweats02sweat01

ボロボロになって今にも崩れ落ちそうな姿の橋。“幻”というくらいだから姿を現したときは、さぞや神々しいと思っていた。近くにあって、いくつか見た橋たちも古いとはいえ、こんなに痛々しくはなかったのに…湖に沈んでいたと言うけど、それでこんな姿になってしまうものなんだろうか?

「ナギサン!ダメやわこいつ、すでに抜け殻でやす」

「なに!なんで?どういうこと?」happy02sweat01

「あてと同じに魂は抜けん出てどこかへ行きよらしるよなぁ…」

Bligeon

抜け殻…? それじゃ『願い事』なんて無理じゃない…
確かめようと橋にそっと触れる…ホントだ!何も感じない。橋自身は、もうここにはいないんだ。
とっくに“自分の旅”へ出てしまったんだろうか。
心のどこかで期待していた分、ガッカリした。いったい、どこへ行ってしまったんだろう…

「へーっヒトは、こんな橋さら何で見に来んだかね。こな数多に残しをしてて」

「何を残してるの?」

「ヒトさ思いが石ころんごとしに散らばってまわ。ここん石よか多いやも知れねし」

「そう…」despairsweat02

そんなにたくさんの届き処のない『願い』で、橋は囲まれていたのか…。

「おっ!おっ!来ますわナギサン!」

「何がぁ…?」gawk

「汽車でさ。除けましんと」

「そんなバカな!ここは…」coldsweats01

ボーッ

「はっ!」coldsweats02

Cometrain

ホントだ!来る!何かがこっちへ向かってきてる!
真っ白い煙を吐きながら白っぽいものが走ってくる!

「ヤバイよ!コロン逃げよっ!」coldsweats02sweat01

「へっ?何でらす?除ければなしも…」

私より先に気配を感じていたのか、風は逃げたようにいつの間にか治まり静まりかえっていた。その中をどんどん近づいてくる機関車!
すぐにこの場を離れるには風が無いと無理だ。

「いいから!とにかく、あの森の中へ!」happy02sweat01

何だかマズイ気がした…たしかにあれは機関車のようだ。しかもあの汽車は幽霊機関車だと思う!レールもないところを走ってくるくらいだから…。
本で読んだことのある幽霊船にしてもそうだけど乗り物の幽霊はロクなことがない気がする。だから、関わらないほうが良いだろう。

「ナギサーン?なんでま隠れるすか?」

「相手の正体もわからないのに平気でいられないじゃない!特にこういう世界は!」bearingimpact

「こゆ世界?」

来た…来た!来た!

カタン… カタタン… カタタン… 

Taushtrain

後ろから、ありもしないレールを食む車輪の音が聞こえる。
森の中から様子を伺うと今にも崩れ落ちそうな橋の上を大きな機関車がゆっくりと、それでいて何の迷いもなく渡ってくる。

「ナギサン?あれ…橋を渡るば、こちの方へ来るやなますかいな?ここも奴どもの道やろ」

「え…!」coldsweats01

そうだ!橋は真っすぐこっちへ続いてる。…ここも線路があったところ?
隠れなきゃっ!

「ほらー、こち来ましるわ、ナギサン」

「わーっ!わーっ!隠れようって!わーっ!」coldsweats02

ボーッ!ボッ ボッ… シューッ… シューッ…  

ギィーッッッ…

うわァーッ見つかった!機関車が停まる…
でも、それ以上隠れようとすることができなくなった。猟師に見つかった野ウサギみたいにそこから動けなくなった。
「怖い」という気持ちで頭の中がみるみる染めかえられていく…

シューッ…

大きなため息をついて汽車が止まった。
テレビで見た汽車は真っ黒だったけど、目の前にいるのは透き通るように白い。

「こらあ、おおげさん奴ですなぁ」

「シッ!静かに!」happy02sweat01

相手の出方次第では…。いつでも「糸」を飛ばすつもりではいるが、このクジラのような車体を何とかできるだろうかは、とても心配だ。
とりあえず相手の動きは見逃さないようにしないと…

Forestrain

「停車―ッ 停車―ッ タウシュベツ臨時駅-ッ」

ボッ…ボーッ

わーかってるって!ホンッ…とに時間とかうるさいねぇ!ダイヤなんかもう関係ないのにさぁ…」

大声がして、人影が中から現れた。

「やぁこんにちはーっ!乗ってかない?」

軽く話しかけてきたその人は、機関士という感じじゃなかった。

「乗るます!乗せるやん!」

ょっとぉーっ!コロンっ、やめときなよsign03happy02sweat01

「いですやん。風も無しこつですからに。ここおってんも、どこも行けんでらに?」

コロンには用心というものは解らないんだろうか?まいったなぁ…
普通、知らない人のくる…乗り物にハイハイと乗るものじゃないじゃないか!

「どこまで行くの?」

「いえーっ!すぐ近くの街なので…」coldsweats01

「あーっ糠平だね。いいよー! おいっ!少し寄り道しようよ」

「だば!乗るます乗るます!」

あ~っsweat01ちょっとぉーっ!コロンったら…サッサと乗り込んじゃった。

「始めまして、ボク萩岡です。こいつは…ホントの名は小難しいなぁ…SLがいいね」

「ナギサです…始めまして…」gawksweat01

Dscf0208

「こんにちはーっ!おばちゃーん」

「あら!義江ちゃんかい。なに、休みでなかったの?」

「はい!ちょっとヘルプで…ところでお客さん戻ってます?“ナギサ”って子」

「えっ?うちにお泊りさんは来てないよ。週末まで予約ないし…」

「あれぇっ?違った? ●●さんの方だったかなぁ」

「●●さんとこ、改装で臨休してるしょ」

「あ…そうか…」

え…?じゃあナギサさんはいったいどこへ?

「誰?知ってる人?」

「いえぇっ!いいんです。カン違いでした。そういえば…翔平君どうしてます?」

「さぁーっどうしてるんだかねぇ。電話しても『仕事中だから!』ってナンボも話さんしねー。ま、あの様子じゃ元気なんしょ!おなか痛めて産んだ子だのに顔も忘れるべさ!」

「そうですか…すいません。また来ます…」

「ああ…お父さんによろしくね。来年もワカサギ釣りには来るんでしょ?」

「はい!伝えときますっ」

あれぇ…?たしかにここに泊まってるって聞いたはずだよね…なんで?
カン違いかなぁ…。じゃあ、どこにも泊まらないでいったいどこに?

Trainon

ガタタン… ガタタン… ガタタン… ガタタン…

「あのぉーっ…」gawk

「はい?なあに?」

「このSLさんって、もしかして…」

「うん!霊だよね。僕らと一緒の」

「レえェ-?汽車にんも幽霊なるでか?」

「なるともさ。魂もあるわけだしね」

「こなん、バカ大きのは初めてでわなぁ」

ボーッ!

「ホーラ怒ってる。コイツけっこうプライド高いんですよ。それに、これでも標準スケールなんだし」

「どこへ行く途中なんですか?」confident

「いやぁ、目的地はないですよ。走り続けるだけさ。こいつの未練だったし」

「未練…?」catface

「走るために生まれたんだよ。ところが、コイツが走っていた路線が廃止で現役引退したらしい。時代はディーゼル化が進んでたから、そのまま記念公園入りで走れなくなったんだよ」

「よっぽど走りたかったんですね…。どこで知り合ったんですか?」happy01

「ボク、昔から旅好きでさ。コイツのいた駅跡にも行ったことがあるんだよ。生前の旅を辿ってきてコイツと会って走りたがってるのを知った…それからさ」

ボッボーッ

「OK!わかったよ!ちょっとゴメン。レール敷いてやらないと」

「レールぅっ?」catface

Railshot

聞き返すまもなく萩岡さんは、ムチのようにふた筋の光の矢を飛ばした。
光の筋が森の先をなぞり、SLはその筋に吸い付くように道を変えていく…。

「ナギサンも、あゆの出しまらすな。岩を割ったりしるときのな」

「私のはぁ…もっと細いのだよ。岩の隙間に入りこめるくらいの…」coldsweats01

幽霊も人によっていろんなことするんだなぁって思った。

「よーしと…こいつ頭が固いから路線跡しか走らないのさ。線路の記憶をね。でも、軌道跡がすっかり壊されてて続きを見失ったり、先が終点だったりした時に線路の記憶の替わりに延長してやるんだよ。今走ってきたところは旧線だったから後で敷き直された新線との付け替え部分は曖昧なんだ。たまには線路も無かったようなところも走るよ。空に向かってとか…」

「へぇ~っ妙なんことするにゃねっ」

「そうですか…それであんな風に… ん…?confident

─夢 記憶 旅 SL レール 橋 願い… 頭の中で、今までのいろんなことが、クルクルとよじれて1本に絡まった。そしてある考えが─

「あの…すいませんsign03お願いがあるんですが…」coldsweats01

【つづく】

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