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2009年10月 9日 (金)

プレハブ

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季節はうつろいゆく
ヒトの作るもの以上にめまぐるしく そして確実に組み替える
ヒトの作るものも覆い隠さんとするかのように…

ヒトの時間は、シヴァの居眠りにも満たない一刹那。
朝開いた鮮やかな花のごとく夕べには醜く萎れて消えて
景色の中に置かれた棲家もやがて朽ち崩れていった。
古いといってもたかだか数十年。ヒトの名誉も栄華も夢も一過性に過ぎないのだろうか。

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置き忘れられた風景が久しく忘れられるのは、一端に自然の包容力のほうが凌いでいるように思えて、この間まで人が出入りしていた店の前にもう背の高い雑草が揺らめいてる。そうしてひとつの時間が終わったことを知らせる。
それは不動産の「空テナント」の文字よりも早いのかもしれないね。
同じ『空』でも空しい「空」
季節は無言で知らせてくる。
春の草花 夏の緑 秋のコスモス うっすら降り積もった新雪…
「もう、行ってしまったよ…」と言うように。

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緑の秋痩せが進んだ朝、郊外というには人里離れたところ。
畑作地が続いているけど畑だったのもずいぶん昔に思えるほどに荒れ果てて見えた。
その奥の藪の中に緑色の外壁が見え隠れしている。
近くには木立に行き先を阻まれたマイクロバスも…

プレハブ? 物置か資材庫かなぁ…

Dscf2240 そう思いつつ、壁から出ている曲がった煙突とか網を張った窓が気になって、ワシワシとクマザサを踏み分けて近づいてみる。プレハブって簡易的なものだからそれほど魅力は感じないのだけれど。
プレハブの回りは旧家があったと思われる残骸が散らばっていた。
建物は、このプレハブを除いて全て潰れてしまったようです。
手押しポンプがひとりで頑張って立ってて、五右衛門風呂の釜が落ち葉色にまぎれて空に向かってポカンと口を開けている…

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Dscf2244 プレハブと家は同じ時間を共有していたものではないらしい。
ともかく、ひとり残されて秋空の下で小さく干からびたサナギのように木立の中へ残されて、打ち破られたような入口からクマザサが中へ入り込もうとしている。
中を伺うと…煙突が出ていたことからやはり、倉庫ではなかったようだ。
食器棚 シンク ソファー 布団の山…明らかに人が暮らした名残。
こんなにも人里から遠ざかったところにも電気があって文化的な生活は送れたようです。でも、ストーブがあるとはいえ、極寒の北海道の冬に断熱材の無いプレハブは辛いです。
もちろん昔から断熱材に覆われた冬暖かい家があったわけでは、ないですが…。

Dscf2252 これは?
小さなメモ─。入院中の母が、ここに暮らす子の元に訪れたが残念ながら留守だったという感じの置手紙。
ここは、何かの雇われ人が、まかない部屋として使っていたようですね。
家具は、ここに置かれる以前から使い古した感がありましたし…
病身の身を起こして我が子に会いに来たけれど…
プレハブに住まった人は、もう戻らないでしょう。
それほどに年月も経ってしまったようです。

「天高く─」という歌があるように秋の空はどこまでも高い。
宇宙までも「そら」とするなら空は果てしなく高いのだけれど、夏の空は色濃くて雲が流れるさまは、天井画のように見える。
『絵に描いたような─』って表現があるけれど実物が絵のように見える不思議な錯覚。
それでも秋の空を流れ行く雲たちは、ひときわ高いところから精密機械の回路基板よりも細かい大地を見下ろしているようです。
何を想うのか… 何も想わないのか… 想わないよね。

Dscf2242 小さい頃、近くの川が河川改修工事をしていた頃。
その川は、いかにも流れが、その力をもって大地に記した自然の川で、大雨が降ると川べりの樹木を押し流して川幅も広げてしまうほどでしたが、川上の方から順に板チョコみたいな形のコンクリートを張り巡らせた高速道路みたいな川に変わっていきました。

そんな大金をかけて改修した川も今風潮だと、同じようにお金をかけて元の形の川に戻すなんてこともあるようです。
当時の工夫の人達は、今のように自家用車で毎日帰宅というものではなかったらしく(出稼ぎということもあり)工事の進捗に合わせてプレハブ2階建ての仮宿舎が移動してきて、奇妙な光景に感じました。
自分の家より大きなのがあっという間に建ったり、たたまれたり…
みたこともない「働く車」が走り回って、工事というよりサーカス一座の移動のイメージに思えました。そんな遠い記憶…

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Dscf2248 薪はぜるストーブ 風に軋む小屋。
年月は、望む・望まないに関らず家族を振り分けていく。
親ばなれできない子。子ばなれできない親。
脳裏をよぎる軽い劣等感は、母の顔に刻まれた皺よりも多く、深い。
ただ、その愛情を受けることだけが今できる母の想いに報いる唯一の手立てみたいに思えてくる。

「大丈夫だよ 元気でやってるよ」

想いの渦に巻き込まれかけたところで

「パチン!」 

はぜる薪の音が心を現世へ呼び戻した…。

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コメント

このようなプレハブはたまに見かけますね。
しかし中がこのようになってるとはなかなか想像できませんし、こんなドラマがあろうとは。

投稿: カナブン | 2009年10月12日 (月) 19時42分

cat疑問に感じたのは煙突と網戸でしたね。
倉庫にしては不自然で。。。

投稿: ねこん | 2009年10月12日 (月) 22時37分

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